昨年、とある先生に薦められた本で、「忙しい」という言葉にかこつけて、なかなか読む時間が
ないまま本棚に眠っていたのを年末、年始にやっと手につけることができた。
この本の中での代替医療とは、針、ホメオパシー、カイロプラクティクなどのことを指し、本の
中身はこれらを科学的に検証した際に、はたして効果があるのか?という内容である。
結論は「ノー」である・・・・・
この結論に対して、この場でとやかく言及するつもりはない。
ただ、この本は現在の我々の常識というのは先人たちの途方もない時間、労力、犠牲の上に成り立っているということを知らしめてくれる。例えば、「喫煙者は肺がんのリスクが高い」。今では子供でも知っているような当り前の事である。しかし、この常識もたかだか50~60年前にリポートされ、ショックを受けた人もかなりいたようである。
そしてこういったものを集約したものが、現在、EBM(Evidence Based Medicine)とよばれている
ものである。訳すと「科学的根拠に基づいた医療」・・・歯科の中でもエビデンスというのは多々ある。
たとえば「喫煙は歯周病のリスクファクターである」。何かタバコばかり目の敵にしているようで吸っている方には申し訳ないが、そういったことである。
もちろん、エビデンスというのが必ずしも正しいことではなく、後に大きく修正されることもある。
しかし、誰かが最初に提案しなければ検証されることもない。研究者や企業等の思惑もないわけで
はないだろう。ただ、そこだけを論ってEBMという考え方自体を否定するのもどうかと思う。
私のような一般開業医はそういったものをジャッジする目が必要だと考えている。一般社会同様、
歯科業界も様々な情報が氾濫している、いわゆる、「トピックス」である。新しい考え方、マテリアル
非常に重要である・・・・ただ、そこに振り回されてはいけない。私は、誰かが散々検証してやり
つくしたことだけで十分であると考えている。これは「ゴールドスタンダード」である。
極論ではあるが、そこだけでもやりきることは非常に難しいことです。一番、大切なことは患者さんが
最大の恩恵を受けることである。そのためには、私は学び、自分の過去を検証し続けることが
義務であると考えている。このスタンスだけは何十年たってもおそらく変わらないだろう。
最後にこの本の素晴らしいところは、EBMという考え方をほんの数時間で学べることである・・・・